そんなに " 面倒 " が嫌なのか?
BI の blog にコメントを書くようにしています。
最初、スタッフへの応援のつもりでした。
ああいう形で公表しているからには、やっぱり、相手も反応が欲しいだろうと。これは、自分も blog やってるからそう感じたんでしょうな。
やっぱり、自分の中で何かのスイッチが入っちゃったのは、解体動作の省略のときですかね。
「解体動作がなくなってもベルアイルであることは変わらない」という意見もあります。
「内部的には<解体>スキル判定はあるだろうし、別に<解体>スキルが消えるわけではない」ってのは自分もそう思います。
でも、「解体動作がなくなる」ことに込められたものは簡単なものじゃないはずです。
過去、UO、やってました。
現在、家とかキャラの維持のためにお金だけは払ってますが、ログインすらしてません。
何故なら、つまらなくなったからです。
自分が UO に " 移住 " したのは、『The 2nd Age』の頃で、まだトラメルとかフェルッカとかいう言葉が存在しない時代でした。
その時ですでにけっこうの修正がきていたらしく、「UO はつまらなくなった」と嘆く先輩がけっこういたんですが、「スタート地点の街から出ると即 PK の洗礼」とか「bank 前で泥棒に全財産スられる」とかが日常茶飯事な、まだ UO らしい時代だったものです。
生まれたてのキャラがもらえるお金は 100gp ですし、必死に動物とか倒してもなんか肉しか出ないし。*1
生産をするにも、道具と材料をクリックする順番があったり、複数の材料をクリックする必要があったりと、とにかく " 不親切 " で " 面倒 "。
でも、それが本当にそれを作ってる気分にさせてくれてましたね。
火をダブルクリックして、肉をクリックして……コゲたり。
その柔軟なシステムのおかげで、ファイヤーエレメンタルや forge をダブルクリックして肉を焼いたりできたそうで。
あと、まだ、PC の強さはプレイヤースキルでした。スキルは各 100 マックスで 700 の壁は絶対でしたし、失うことを恐れて最高級の武具などほとんど装備しなかったため、自ずと「ほどほどの装備で勝つ戦術」が必要になったわけです。
魔法のダメージを軽減したり、避けたりするのはそういうスキルを取得するしかないのも、悩みどころでした。スキルを割いて回すか、ダメージを上げる技を磨くか……
そして、その闘いでアイテムを摩耗し、失うことは頻繁でした。もちろん、一方的に襲われて失うことなど日課みたいなものでした。だから、鍛冶屋はいつも大人気でした。
それから、何度もパッチが当たり、いくつかの
世界は「PK や泥棒ができるフェルッカ」と「できないトラメル」に別れ、いろいろな理由*2で過疎化が進み、有名な街道を通っても人にも会いません。
生まれるとお祝いで 1000gp です。
当然、物価は変わっていません。それどころかアイテム保険なるものが導入されたので、アイテムは失わず、ほとんど壊れないため、フツーに鍛冶屋が作った HQ 武器は捨て値でも売れません。
武具にはすべて魔法耐性の数値が設定され、強さは「いかに強い武具を装備するか」で決まります。
ダンジョンの中には同じ装備の人が溢れました。
生産者はそれらの魔法アイテムの一部を作れるようになりましたが、それを作るための専用道具が入手困難なため、非常に高価で取り引きされています。しかし、大枚はたいて購入したとしても、付与効果はランダムなため、「確実に元値を上回る儲け」は考えてはいけません。これは金持ちの道楽なのです。
よって、魔法アイテムは、作っても一攫千金の確率はかなり低く、ダンジョンに潜ってモンスター叩いた方が手っ取り早くいいアイテムを確実にドロップします。ベンダー業務で遊びたい人は、生産者を鍛える時間があるなら、戦士を作ります。
生産スキルを極めていたとしても、材料を消費し、売れない「ただの HQ 品」を作るよりも、「材料をそのまま売った方が確実に儲かります」。*3
生産は、道具をダブルクリックすると「文字のメニューが出ます」。材料をクリックする必要はありません。もう、アップルパイを作るのに「パン生地を煉って……卵を……」と「イメージする必要はなくなりました」。
モンスターは金持ちになりました。魔法アイテムだけでなく、ざくざくとお金も落とします。
魔法アイテムの効果には、「秘薬軽減」というプロパティができました。合計 100% まで揃えれば、「魔法を秘薬消費なしで使えます」。いい装備を入手できれば、「タダで魔法を撃ち放題」です。
腹もほとんど空かなくなりました。*4魚のステーキは減らず、食べたくても「ぶっちゃけ満腹だからよ」と怒られてしまいます。
たぶん、いっぱいの人が「面倒だ」という苦情を送ったのでしょう。
「お金が少ないです。もっといっぱいください」
「PK されました。はらたちました。なんとかしてください」*5
「自分の方が高い装備を着ているのに、勝てません。理不尽です。なんとかしてください」
「空腹だとスキル成功しづらいと噂を聞いた。面倒なので、いっそのこと減らないようにしてくれ」
それにスタッフが応えたのでしょう。
PK を禁止したり、簡単にしたり、要望が多ければ導入するのは " ものを売る " 企業としては当然の選択なのでしょう。
しかし、そうなると UO じゃなくなる。ただの「MMORPG」になる。
おそらく、かなり意見の衝突があったはずです。
これは文化を守ろうって話ですから。UO が UO である部分――アイデンティティ――を死守する闘いだったはずです。
そして、 UO を、いや、Ultima を生んだ「保守派代表」リチャード・ギャリオットが、UO から去りました。
続々と UO から馴染みのある名前の人が辞めていき、そのたびに UO はどんどん " 簡単 " になっていきました。
そして、現在、 UO は " 作品 " から " 商品 " になったのです。
UO を変えたであろう人たちは確実にいました。
懐かしい話ですが、日本語で「これからの UO のアイデア」を議論できる UO 公式 BBS がありました。
匿名で無責任に発言できるものではなく、アカウント名でログインするタイプの BBS です。書き込み名にも反映されます。
ここまで身元がはっきりしていれば、実のある討論ができるはず、とスタッフの人も考えていたのでしょう。
結局、この BBS は閉鎖されることになります。
何故なら、議論が進まなかったからです。
例えば、まったく意味がない食料生産者に " 職を与える " ために「餓死を導入しよう」という意見がありました。
それに対するレスは「面倒臭い」「効率が落ちる」でした。
見事なスレッドストッパー。
彼はその後も色んな懐柔案に対して、「俺が面倒って言ってるだろ? 死ね」を繰り返しました。彼の後に続く人もいました。
しかし、ちゃんとしたアカウント名ですし、生きたアカウントってことは金を払っているってことで、これも貴重な " 客 " の意見にはかわりません。
こうして、UO アイデア議論 BBS は閉鎖されました。
その後、料理人が作れるものに「美白剤(食べ物ではない)」が増えました。
これが UO スタッフの回答だったんでしょうか。
例えば、50 年くらい経てば、技術が一ランク進歩するそうです。
ライト兄弟が空を飛んでからアポロが飛ぶまでは 60 年、その法則で、ロボカップも 2050 年の「vs 人間サッカー優勝」を目標に定めています。
でも、50 年経ったときにいきなり技術が変わるのでしょうか?
当然、そんなはずはなく、50 年の間に " 少しずつ " 変わっていきますよね? その微妙な変化に気付くか、気付かないかの差ですね。
ダムが決壊するのも、最初は蟻の開けた穴とよく言われます。
人間心理でも、ひとつを許せば、ずるずるとすべてを許してしまい、身の破滅を招きます。
結婚詐欺師とかがよく使う「最初は 1000 円を借りて、徐々に金額を上げていく」手法もそうですし、「これだけならいいか」で終わらないのは、ダイエットをしたことのある人なら誰もが経験している苦い " 第一歩 " ではないでしょうか。
健康のために始めたジョギングは、「今日は疲れたからお休み」と決めた時点でスケジュールから消えるカウントダウンです。
街の治安レベルも、最初は、窓とかが壊れているのが放置されてたりとかのちょっとしたことからどんどんエスカレートしていくんだそうです。
ナチスは最初に共産主義者を攻撃した。しかし、私は沈黙していた。 私は共産主義者ではなかったから。 彼等は次に社会主義者を攻撃した。しかし、私は沈黙していた。 私は社会主義者ではなかったから。 彼等は次に労働組合を攻撃した。しかし、私は沈黙していた。 私は組合員ではなかったから。 彼等は次にユダヤ人を攻撃した。しかし、私は沈黙していた。 私はユダヤ人ではなかったから。 ある日、彼等は私のもとにやって来た。その時、私は初めて彼等に抗議した。 しかし、その時には、何もかもが遅かった。 (Martin Niemoller)
貴方が何かを守りたいと思うならば。
その " 第一歩 " を防ぐべきなんです。